Ayurveda for your life

mahat tuning と三原寛子先生とKaphaの待ち時間


mahat tuning というアーユルヴェーダのお料理教室が10年目を迎えた。

南風食堂という屋号で活動をする三原寛子先生と2人で始めたお教室。

コロナ禍に一年お休みをしたので、ご一緒して11年目となる。そしてこの教室を始める前に1年間準備をしたので、共にしている時間は実質12年目。

ここだけの話、mahat tuning 誕生の頃の私は日本に帰国したばかりで、独立したての駆け出しほやほやで右も左もわからぬまま、ただただアーユルヴェーダの仕事がしたくて脇目も振らず仕事をしていた。これからがんばるぞ、というそんな中急に結婚し、家庭ができて、子どもが生まれたタイミングだった。

どうしていったらいいのかわからず、あらゆることに混乱し途方にくれていた。

思い描いていた未来と、新しい現実と、ものすごいスピードで起こる出会いと別れと、そして子育てによる極度の肉体疲労と寝不足が重なって

でも目の前にある命を育てていくことに全力で、何もかもに泣きそうだったそんな時期だった。

もう忘れたふりをして、でも鮮明に覚えている。


そんなある日、三原先生(通称ミハさん)がちょっと打ち合わせをしようと誘ってくれた。

歩き始めたばかりの長女は、もはやベビーカーではじっとしていられず、散歩もできる場所でお願いします、、と今はなき CAFE 246 でご飯を食べた後、青山一丁目から神宮外苑前まで歩きながら話をした。

外苑前の銀杏並木の下を勝手にトコトコ歩いてしまう小さな背中を追いかけている時に、ミハさんがアーユルヴェーダとお料理のお教室を一緒にやってみない?とお誘いくださり、正直とっても嬉しかったが

こんなめちゃくちゃな状態の私で務まるのだろうかと、半分以上自信がなかった。

それでも1年間の準備期間を経て一緒に始めてくれたこの教室の誕生を

私は今でも奇跡のように思っている。

じっくりと焦らず待ってくれたミハさんの優しさのことを思う。


料理家であり、食べることが大好きなミハさんは、もちろん食材への愛情も深く、そして感じること、楽しむこと

みんなで一緒に食卓を囲むことの歓びをとても大切に生きている人だった。

ミハさんの屋号、南風食堂は元々小岩里佳さんと2人での料理ユニットで、食に関する企画提案や編集物の制作、アートプロジェクトでの作品制作展示、雑誌やWEBなどの料理紹介、商品開発や店舗のフードディレクションなど多岐にわたる活動を2人でしていた。

小岩さんが出産後子育ての比重が増えて、徐々に南風食堂における活動はミハさんが中心になっていっていたそんな日々をミハさんはどう思っているのかなと思っていたそんなあるとき

ラジオ番組のインタビューでミハさんがそのことを話していた。

「南風食堂は小岩里佳さんと2人でのユニットです。今は小岩さんは子育てがあってお休みしていますが、また小岩さんの子育てがひと段落して50代、60代くらいになった時に一緒に活動できたらいいなーと思っています。」

20年くらいなんてことないよ、待ってるよ

そんなふうに長い時間軸で人を見ているミハさんの価値観に触れて、電気ショックが流れたくらいびっくりして

そしてわんわん泣いた。

私は自分が子育てのフェーズに入っていくことで、周りから、社会から置いていかれることを

仕事が減っていくことを、当時心から恐れていたからだった。

目の前の生命を育てることに感謝して捧げなくては、と思う反面、焦燥感や虚しさがどうしても抜けない自分のエゴに呆れ、責めてもいた。

そんな中、こんなおおらかな視点があるのか、と私はほんとうにびっくりして、そして嬉しくて感動して泣いた。

アーユルヴェーダの言葉でいうと、Kapha(カファ)という水の要素を優勢に持つミハさん。

近視眼的で、スピードが早く、移ろいやすいVata(ヴァータ)という風の要素が優勢な現代の都会のリズムや価値基準の中で

ミハさんの中にしっかりと根ざしている時の流れは

ほんとうに優しく感じられた。


mahat tuningはこの10年間、マイナーチェンジはあれど、ほぼ変わらない内容で

皆さまに食とくらしの知恵を季節に一回、1年間かけてゆっくりとお届けしている。

私の中のKaphaも自信を持って、焦らず心地の良いテンポで

毎年経験と学びを深め、同じことを繰り返す中で気づきを得ている。

10年間一緒に教室やイベントを開催させていただくことで、私は多くのことを学んだし

たくさんの影響を受けた。

優しさということについて、待つ、ということについてたくさんの影響を受けた。

大きな仕事を、騒ぎ立てず、淡々と引き受けていくミハさん。どれだけ多忙でも、それを決して見せないミハさん。辛いことも、嬉しいことも、やるせないことも、愛も、たくさんのことを内包した優しさ。

よちよちしていた娘は、もう中学生となり私の身長を越してしまった。

そして自分の手で包丁を握って、台所で肉じゃがなんかを作って家族に振舞ってくれている。たった12年で。

あの時永遠のトンネルのように感じた時間は、実際に生きてみるとなんてことはなかったのだ。

もちろんお互いの人生にたくさんのことがあったけれど、それでも続いているこのお教室と

このお教室を通して出会えた人々との間に生まれた出来事を、本当に宝物のように思う。

そしていただいた優しさをおんなじふうに誰かに返していきたいなとずっと思っている。


mahat tuning 次回の募集は2026年年明けとなります。

また皆さまとじっくりと余白のある学び、余韻の中で深めていくような時間を

ご一緒できますことを、楽しみにしております。